ほうれん草終了

ほうれん草の出荷が終了しました。
ほうれん草はJA出しではなくて、直売所の販売です。
この時期たぶん多くの農家さんはハウス物だと思うのですが、あえてうちは路地物で勝負(露地物の方が甘味が強くなる。霜に直接当たるから)
畑から収穫して、外側の傷んだ葉を取って、根を切って、洗って、量って、袋に詰める。それに値札を貼って、ダンボール箱に詰めて、店まで持って行って自分で並べる。
直売所は全部全部、消費者さんが買い物かごに入れてくれるまでの工程を自分でやらなきゃいけない。けど、一日どのくらい売れたのか数字で見れるし、売り場でお客さんと直接話も出来るから楽しい。
「この前も買って行って美味しかったわよ」とか「直売は新鮮だし安心できるから」と言ってくれる人。
うちはちょっと珍しい野菜(新品種)を実験的に作ったものは直売所出しするから「どうやって食べるの?」とか、そういう会話も。
今回は忙しい時で(特に三連休)朝、昼、夕と3回持ち込んで、搬入時にはもう前回納品したものがゼロになっていることがほとんどで(たぶん1日100個以上売れていた)リピーターさんもきっといてくれるんだろうな、と思うと嬉しい。

でも、ほうれん草の出荷の時だけは思いだすんだよね。
2年前のこと…。
原発事故があって、しばらく後に他県のほうれん草からセシウムが検出されたとニュースになった。
そのセシウムを落とすために、ほうれん草は洗うとニュースでも言っていた。

うちが出しているほうれん草は露地物だから洗う。露地物は雨が当たるために葉にも泥がついているから(ハウス物は根本にしか土はつかない)
放射能関係なく、震災の前から洗っている。洗わないと商品にはならない。
いつものように、普通にほうれん草を売り場に並べていたら、同年代くらいの女性が近寄ってきた。
そして低い声で「洗うんですね」と憎々しげに言われた。
売り場でいきなり見ず知らずの人に怒り感情ぶつけられたのが初めてで、とっさに反応もできなくてポカンとした表情になったんだろうね。
もう一度「ほうれん草、わざわざ洗うんですね」と言われた。
それで、あぁ、放射能のことか…と思ったんだけど、その時にはその人は立ち去っていた。

子葉(双葉)が黄色く枯れたものがついているのが、生えているほうれん草の姿。
雨ではねた泥が根本にも葉にもついているのが、路地物ほうれん草の姿。
そのまま販売してもいいんだけど、枯れた葉付き泥付きのほうれん草は、きっと全部売れ残る。

昔はどの家でもある程度の畑は所有してて、簡単な野菜なら作っていたよね。
今は「ガーデニング」という特殊な趣味をやっている人でないと、地面に生えてる野菜の姿は見ない。こんな田舎でも。
畑に生えているそのままの野菜の姿と、スーパーに並んでいる野菜の姿は、ちょっと違うんだよ。
「売り物」にするために、農家だったりスーパーのバックヤードだったり(袋詰め含む)で、手を加えているんだよ。
綺麗な野菜しか見たことないから、地面の、土の上で作られている物だということを失念している人も多いんじゃないかと思う。
実際、野菜の旬を知らない人も案外多いし。

毎年、私はほうれん草は洗って直売所に並べている。
放射能がまき散らされる前から、事故の年も、それ以降も。
あの人、直売所で今年も来年も再来年も、ずっと洗い続けられているほうれん草見てくれないかな。
あの時の「洗っているんですね」は誤解だったと気付いてくれればいいけど。

他の野菜を出荷している時は何も思わないんだけど、ほうれん草の時だけ思いだす。日本中が食に対して不安でしかたがなかった時。
食の安全とか安心とかって、結局は「信頼」なんだと思う。
生産者と消費者が直接会話のできる信頼の場でもあるから、直売所は面倒でも好きなんだと思う、私。


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2013年12月26日 Posted byぴ子 at 21:00 │Comments(3)農業

この記事へのコメント
その人は何を言いたかったんでしょうか?
どう考えても真意がわからない・・・

私だったら「洗ってくれてあるから、自分で洗う手間が省けて楽チン」
くらいに、イイ方にしか考えないかも。

私は食に関わる仕事に就いています。
「安心・安全」な食べ物を提供しているつもりでも、
「信頼」が無ければ、そのようにとらえてもらえないですもんね。
お客様の信頼を得られるよう、努力しようと考えさせられました。
頑張りまっす!
Posted by とらうさ at 2013年12月26日 21:22
初めまして

路地のほうれん草ってホントに甘くておいしいんだけど…
めちゃめちゃ見た目悪いですよね
我が家も直売に出す荷作りは手をかけてます
消費者に理解してもらうためには、直売って大事ですよね
Posted by お花見さくらお花見さくら at 2013年12月26日 21:53
>とらうささん
「あの時」、某E野さんが「ただちに健康には被害がない」とかわけわからないこと言っちゃったせいで(じゃ"後には"被害があるのか?って話で)日本中が疑心暗鬼に包まれちゃっていたからね。
放射能数値が出たほうれん草を洗う=葉についた放射能が落ちる=数値が下がる=数値偽装みたいな報道もあったんですよ。
だから逆発想してしまって、洗ってあるほうれん草=放射能付き…って思い込まれたんじゃないかな、と。
「信頼」がなければ、事実はどうであれ、安心してもらうことはできない。
どうすれば信頼してもらえるか、やっぱり、生産者と消費者が近くにいることだと思うんですよね。

>お花見さくらさん
始めまして~。
ハウス物はスラッとしてて葉の形もそろってて「イケメン」ですよね(笑)
露地物は葉はサイズバラバラだし波打っていたりして、個性派ぞろい。
でもハウス物か路地物か見ただけでわかるのは「作っている」人なんだと思います。
直売で会話出来る時には「甘いですよ」「味が濃いですよ」くらいのアピールができるのもいいですよね。
荷造りも手間かかるけど、一番悩むのが量と価格(笑)
お花見さくらさんはどうやって決めていますか?
ちなみに「消費者」として、あちこちの直売所で自分ちて作っていない野菜買うのも好きです。
Posted by ファーママファーママ at 2013年12月28日 15:59
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